高松高等裁判所 昭和25年(う)652号 判決
原判決は証拠の標目として領置物件作業衣七十四着の存在を掲げておりこの証拠物は被告人岡暉雄の事件について証拠調をした形跡がない。然らば証拠調べのしない証拠物件を断罪の資料に供した違法がある。
なお、職権をもつて調査するに、原判決は証拠の標目として被告人藤沢俊二の公判廷における供述以下多数の証拠を羅列している。もとより判決の証拠説明には唯証拠の標目だけを示せば足り、その内容を逐一写録するに及ばないことは刑事訴訟法第三百三十五条第一項に明示するところであるから標目の羅列で差支えない訳であるが、唯この場合、どの証拠によつてどの事実を認定したのかを判り得る程度に示さなければならない。挙げた証拠の標目からどの事実の証拠であるかが自ら判然する場合は、特にこれを明示しなくとも違法という訳にはゆかないが、多数の犯罪事実がある場合に漫然証拠を羅列し、どの証拠によつてどの事実を認めたのか判らないような証拠説明は法の要求を満たさないものというべきである。この看点から原判決の認定事実とその挙示の証拠を見ると、どの被告人の犯罪事実をどの証拠によつて認めたのか判らない。しかのみならず弁護人近藤勝の控訴趣意第二点において論難された如く羅列の証拠の中には共同被告人の一人に対しては全然証拠調べをした形跡のないものがあるのである。さらば原判決は適法な証拠調べをしない証拠を断罪の資料に供した違法と判決に正しい理由を附せなかつた違法があり前者の違法は判決に影響があるから破棄を免れない。